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SSI2019 特別招待講演

特別招待講演Special Invited Lecture

特別招待講演1

岡本卓講演タイトル: AIを用いた感性学習とAIスタートアップ企業の実際

講演者: 岡本卓 先生

現在のAIブームは,第3次AIブームとよばれ,ディープラーニングとよばれる技術がその中心となっている。FAMGA (Facebook, Apple, Microsoft, Google, Amazon) が中心となって、ディープラーニング技術をはじめとするAI技術の事業応用の可能性を示したこと、コンピュータスペックの向上とIoT技術の発展により、ビッグデータが容易に収集できるようになったこと、ディープラーニング技術を支えるGPUコンピューティング環境、クラウドコンピューティング環境の充実、AI技術を実装するためのFrameworkの整備とクラウドサービスの充実を背景として、いわゆるコモディティ化が進んでおり、AI技術を容易に事業に取り込むことが可能となり、その応用範囲は拡大の一途をたどり続けている。 現在、一般的にビジネス展開ができている分野を中心に見ると、主として、画像認識、音声認識、自然言語処理が成功している分野といえる。これらは、いわゆるヒトの知覚に相当し、ヒトが普遍的に、外部(自然と他者)からの入力をどのように認識しているかをコンピュータが代替できるようになり始めた状態といえる。 弊社では、ディープラーニング技術を用いて、ヒトの感性を学習し、その嗜好と行動を予測するパーソナル人工知能の技術開発を進めている。前述したように一般的にビジネス展開ができているAIは、ヒトの知覚を学習することで、いわばヒトの代替を目指す技術であるが、パーソナル人工知能では、ヒトの知覚の先にある行動とそのロジック(感性)を理解することが目標である。 本講演では、まず、ディープラーニングを感性工学に応用したAI技術であるパーソナル人工知能SENSYについて紹介する。 また、この技術を開発しているAIスタートアップ企業の実際について、開発環境の変化、人材環境の変化について触れながら紹介する。

岡本先生 ご略歴
2007年慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了。博士(工学)。2014年千葉大学大学院工学研究科准教授。 システム工学、最適化理論、ソフトコンピューティング、計算知能、複雑系を中心に、人工知能技術に関する教育研究に携わる。 計測自動制御学会論文賞・友田賞をはじめとして9件の学会賞を受賞。 2017年10月からSENSY株式会社取締役CRO (Chief Research Officer) 。 千葉大学 グローバルプロミネント研究基幹 特任准教授、同大学 非常勤講師も務める。 電気学会論文委員会(C2グループ)主査、計測自動制御学会 代議員、SICE JCMSI Associate Editor、進化計算学会理事を歴任(現任を含む)。

特別招待講演2

佐藤克文講演タイトル: Internet of Animals (IoA)による海洋環境アセスメント

講演者: 佐藤克文 先生

 全てのモノにインターネットに接続したセンサーを取り付けることでビッグデータを収集することをIoT(Internet of Things)は目指している。しかし、実際にはセンサーは陸上、特に多くの人々が暮らす都市部や先進国に偏在し、定点にセンサーを固定するのが難しい海洋は、情報空白地帯となっている。我々にとって海洋は主な生活の場ではないが、我々の生活は海洋環境の影響を強く受けている。例えば、たびたび日本を襲来する台風や集中豪雨などの突発的イベントは、海上で発達した低気圧が日本に到達することでもたらされ、さらにはエルニーニョ/ラニーニャ現象といった遠く離れた熱帯の海洋環境が、温帯に位置する日本列島の気温を大きく左右する。大型計算機内に構築される仮想海洋の物理モデルを使った予報精度は年々向上しているが、精度向上を阻む要因として現場観測データの不足があげられる。近年人工衛星を用いた観測技術が発達しているが、例えば人工衛星に搭載したマイクロ波散乱計を用いた海水面の凹凸測定と、そこから計算される波浪・海流・海上風のデータ取得は、衛星が同一地点を通過する頻度に対応して1日2点に限定されている。あるいは、人工衛星による水温計測で用いられる電磁波は、海中を透過しないため表層より下の水温は観測できない。
 海洋環境の現場データを取得するのに、広い海洋を自律能動的に動き回る野生動物を利用できる。もともと、動物の生態を解明する目的で、小型の計測機器を動物に取り付けて、行動や生理に関する情報を測定するバイオロギングという手法が発達してきた。そして、ごく最近の傾向として、動物を使って周辺物理環境を測定する研究事例が出てきたことがあげられる。バイオロギングによる海洋環境把握の実例を紹介し、動物由来の現場データを同化する事により、測定していない箇所も含めて広い海域の物理環境に関する現在あるいは未来の計算値を改善するという研究事例を紹介する。

佐藤先生 ご略歴
1990年京都大学農学部水産学科卒業。1995年京都大学博士(農学)授与。日本学術振興会特別研究員を経て1997年より国立極地研究所助手。2004年より東京大学大気海洋研究所准教授、2014年より東京大学大気海洋研究所行動生態計測分野・教授。

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